Advertisement第118回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第7号

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特集 倫理指針改正による多施設研究と試料・情報利用研究へのインパクト
倫理指針改正に際し,研究倫理の基本と人材育成を再考する
尾崎 紀夫
名古屋大学大学院医学系研究科精神疾患病態解明学
精神神経学雑誌 124: 487-495, 2022

 著者の研究および日本精神神経学会倫理委員会に関与してきた経験を踏まえ,倫理指針の改正においても変わることのない研究倫理の基本と,この基本を踏まえた人材の育成について検討した.2014年に発出された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」,2021年に発出された改正倫理指針,さらに両指針が参照してきた2000年発表の「臨床研究7つの倫理要件」において,(i)社会的および学術的意義を有すること,(ii)科学的合理性を確保することが研究のminimum requirementであるとの基本的な考え方は一貫していた.ここで言う社会的意義を有する臨床研究とは,「当事者自身にとって益することを企図された研究か」「当事者の考えを踏まえた研究か」を踏まえることにほかならない.また科学的合理性の確保には研究デザインの検討が不可欠であり,例えばバイアスを最小化するためには前向きコホート研究も考慮する必要がある.本稿では産後1ヵ月時点の抑うつ状態に関して,妊娠期から産後早期の段階で予測できるリスク因子や防御因子の同定をめざして実施中の,電子署名も導入した妊産婦前向きコホート研究について述べた.さらに著者らの調査で確認された,当事者・ご家族の願いである精神疾患の病態解明と病態に基づく創薬においては,これまでも多施設共同と多様な専門家の連携により進めていることを紹介し,指針改正により多施設共同研究のさらなる進展が期待されることにふれた.加えて病態解明の出発点でもあるゲノム解析結果を活かした精神疾患のゲノム医療実現には,従来の倫理指針でも求められてきた遺伝カウンセリングを提供できる精神科医の育成が必要である点にも言及した.最後に,十分な倫理的配慮のもと,当事者・ご家族の願いである病態解明を推進することができる人材育成の重要性を強調した.

索引用語:研究倫理, 当事者・ご家族の願い, 病態解明, 遺伝カウンセリング, 人材育成>
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