Advertisement第117回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第123巻第9号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 統合失調症とはどういうことか
統合失調症―文化精神医学からの一視点―
江口 重幸
一般財団法人精神医学研究所附属東京武蔵野病院
精神神経学雑誌 123: 583-591, 2021

 この論文では,文化精神医学の視点から,統合失調症や精神病性疾患を,「軽症化」し「変遷」しうる疾患として論じた代表的著作を再検討した.それらは,樽味伸,Esquirol, J. E. D.,中井久夫,Devereux, G.,Hacking, I.,柳田国男らの議論である.統合失調症は,1908年にSchizophrenieという用語が鋳造されて以降現在まで,洋の東西を問わず観察されるいわば「普遍症候群」(中井)の不動の地位に据えられてきた.しかし近年の「軽症化」の議論にみられるように,時代や文化的背景に従って変化しうる疾患であるという視点が一般化しつつある.統合失調症を「モノ」という面から扱おうとする接近法と,「コト」という側面を強調する接近法がある.つまり,前者のアプローチが「存在」や「実体」を強調するものだとするなら,後者は「出来事」や「関係性」という側面を扱うことになる.21世紀の現在,広範に広まっている障害観は,正常と異常の境を埋めていこうとする方向をもつ.一方で,狭義の精神医学的な視点は,正常と異常を峻別することを強調する.これら一見すると相矛盾する二極化は,近年ますます進んでいるように思われる.ここで再度「普遍症候群」に対する「文化依存症候群」的な,あるいはMauss, M. の「身体技法」的部分のもつ意味が重要なものとして考えられるようになる.文化精神医学的統合失調症論の系譜を検討しながら,今日,患者(当事者),診断基準,治療者(診断者)の3者がそれぞれ大きく変容を遂げているシステムのなかで,「軽症化」を中心に「統合失調症」とはどういう「コト」なのかを考察した.

索引用語:統合失調症(軽症化), 文化精神医学, エスノ精神医学(Devereux, G.), 無反応な種/相互作用する種(Hacking, I.), 文化依存症候群>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology