アルコール依存症は,飲酒の合法性もあいまって,患者の治療意欲を育むことが困難となる.本稿では「患者の治療への動機づけ」を中心に著者の気づきや工夫を紹介する.最初に「人はなぜ依存症になるのか」について認知心理学の視点から考察し,実臨床における典型的な診察場面を描写した.本題の動機づけについては「患者が依存症という疾患を徹底的に理解すること」が重要である旨説明を行い,そのうえで,治療は「断酒意志を上げること」と「飲酒意志を上げないこと」を分けて考えることが大切となる根拠を説いた.最後に「アルコール依存症におけるハームリダクションの本質」について著者の意見を述べた.
アルコール依存症治療における覚書
ライフサポートクリニック
精神神経学雑誌
123:
500-505, 2021
<索引用語:アルコール依存症, 動機づけ面接, 嘘つき, ハームリダクション>