Advertisement第117回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第123巻第8号

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特集 仮想症例から学ぶアルコール依存症の新ガイドラインと治療ゴール―断酒と減酒の実践的治療を考える―
アルコール依存症の新ガイドラインと治療ゴール
湯本 洋介, 樋口 進
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
精神神経学雑誌 123: 475-481, 2021

 わが国の物質使用障害の診断・治療ガイドラインは,前回2002年版のガイドラインの出版から16年の間を経て,2018年『新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン』が出版された.新ガイドラインでは,アルコール依存症の治療目標について新たな視点が追加されている.ガイドライン中の推奨事項として,アルコール依存症の治療目標は原則的に断酒の達成とその維持であるとしながら,重症のアルコール依存症,明確な身体的・精神的合併症を有する,または深刻な家族・社会的問題を有する場合で,患者が断酒に応じず説得もうまくいかないケースでは,治療からのドロップアウトを避けるための1つの選択肢として飲酒量低減が提案されている.また,軽症の依存症の場合で明確な合併症を有しないケースでは,患者が断酒を望む場合や断酒を必要とする他の事情がない限り飲酒量低減も目標になりうるとされている.アルコール使用障害への断酒以外の治療選択肢の適用可能性の議論は1970年代よりみられ始め,2000年代になってから各国のアルコール使用障害の診断治療ガイドラインで飲酒量低減やハームリダクションといった新たなゴール設定について言及されるようになった.治療ゴールの多様性を認めることで,医療や相談の場に訪れることに抵抗のあった軽症のアルコール依存症者に加え,アルコールの有害使用や危険な使用パターンに該当する飲酒者が治療にアクセスしやすくなる.また,飲酒量低減が身体面や機能面を含めたさまざまなアルコール問題を改善させることが示されている.さらに,重症のアルコール依存症や背景因子をもつケースでも,アルコールで生じるリスクを減じ,向かうべき断酒への準備ができるまでのケアを提供できる.ガイドラインに新たに追加された治療ゴールのコンセプトは従来の断酒治療でカバーできない領域を支える役割を担い,より多くの人々に向けられたアルコールによる健康被害の防止に寄与する.

索引用語:新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン, アルコール使用障害, 減酒, ハームリダクション, 減酒外来>
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