Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第123巻第4号

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資料
東京都立松沢病院における身体合併症病棟の取り組みと課題
稲熊 徳也, 井藤 佳恵
東京都立松沢病院精神科
精神神経学雑誌 123: 169-178, 2021
受理日:2020年12月17日

 精神障害者も適切な身体合併症医療を受ける権利をもつ.しかし,わが国の施策は十分とはいえず,精神科における身体合併症医療体制は,各地域の実情に合わせて独自の運営がなされている.東京都立松沢病院では,1977年に身体合併症病棟の運営が開始された.本稿では,現在の当院における身体合併症病棟の取り組みと課題について資料を提供する.当院の身体合併症病棟の病床数は131床であり,2019年度は1,099名の新入院患者を受け入れた.患者の高齢化を背景に,認知症および統合失調症患者の繰り返す誤嚥性肺炎や骨折,消化器癌のための入院が多かった.需要の多さに対して,看護配置基準の低さなど医療経済面での課題のため利益率は低水準で推移した.精神障害者の権利を保障するためには,精神科身体合併症医療の体制をさらに整備する必要がある.

索引用語:身体合併症, 精神障害, 身体合併症病棟>

はじめに
 精神障害者も当然,適切な身体合併症医療を受ける権利をもつ.2008年度の厚生労働科学研究によれば,精神病床に入院中の患者の47%に身体合併症が存在し,入院管理が必要な程度の患者は全体の14%に及んでいる7)
 この課題に対して,2000年代後半からさまざまな政策が打ち出されてきた.2008年に精神科身体合併症管理加算と精神科救急・合併症入院料が創設され,はじめて身体合併症医療が保険診療点数による裏づけを得た.2012年には身体合併症患者を対象とした精神病棟入院基本料13対1が創設され,また,第5次医療計画が開始され,癌,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病に精神疾患が加わり「5疾病5事業」となったことで,都道府県レベルにおいて精神障害者の身体合併症医療体制が模索されるようになった.2014年の精神保健福祉法の改正では,精神科リエゾンチームとの連携や,総合病院精神科の機能の充実,精神病床における身体合併症に適切に対応できる体制の確保が指針案に盛り込まれた.しかし,精神科身体合併症管理加算は対象疾患の範囲が狭く,精神科救急・合併症入院料は算定要件が厳しすぎるなど,これらの施策が十分機能しているとはいえない.精神科における身体合併症医療体制は,各地域の実情に合わせて独自の運営がなされている9)10)14)
 東京都立松沢病院は1879年に開設された日本最古の精神科病院である.当院では1977年に身体合併症病棟の運営が開始され,精神障害者の身体合併症医療に取り組んできた.本稿では,現在の東京都立松沢病院における身体合併症医療の取り組みと課題について資料を提供する.

I.東京都立松沢病院の身体合併症病棟
1.東京都立松沢病院の歴史と身体合併症病棟の構造
 東京都立松沢病院は1879年,上野公園内に東京府癩狂院として開設し,1919年,世田谷区に移転し,松沢病院と改称した.現在,当院は898床を有し,精神障害者の急性期医療,社会復帰医療,薬物依存症医療および身体医療を重点医療に掲げ,地域と医療連携を推進しながら,都民のための精神医療センターとして役割を果たすことを運営理念の1つとしている.
 当院における身体合併症医療の歴史も古い.当院の年報によると,1945年頃から結核合併症病棟が設置され,身体科の非常勤医師の指導のもとに肺結核の治療を行っていた.1970年代後半までは,院内における身体合併症医療は身体科の非常勤医師のコンサルテーションのもと精神科医が診療にあたり,重症例は地域の総合病院に診療を依頼していた.しかしながら,精神疾患に対する偏見のために総合病院での受け入れが困難な場合も少なくなかった.また,民間の精神科病院においても入院患者の高齢化に伴い身体合併症が増え,その対応に苦慮するようになってきた.その結果,公的医療機関での身体合併症医療体制を整備することが広く望まれる情勢となった.そこで当院では,院内患者に限定せず都内の精神障害者の身体合併症に対応する方針が示され,身体科の副院長や各科の常勤医師が配属されることになった.1977年には老年期精神障害者のための内科慢性期病棟,1978年に内科・外科急性期病棟が開くことになった6).1981年に東京都精神科患者身体合併症医療事業(通称「合併症ルート」)が開始され,精神科病院入院中に身体合併症を併発した患者が,東京都からの仲介を受けて,身体合併症医療が可能な精神科病院あるいは精神病床をもつ総合病院に転院できる体制が整備され,当院は転院を受け入れる医療機関としての機能を担うようになった12)13)
 東京都精神科患者身体合併症医療事業において,それに参画する病院はI~IV型に分類される2).すなわち,夜間・休日における精神科病院入院患者の身体合併症医療は,I型病院に指定される都立・公社5病院が行い,当院も指定されている.I型病院での合併症治療後の精神科医療を提供する場としてIV型病院があり,民間の精神科病院4病院が登録している.平日・日中は,緊急対応が必要な場合はII型病院が行う.実施病院は当院を含む公立・私立の4病院である.緊急対応が必要ない場合は,III型病院が登録制で患者を引き受ける.III型病院には,II型病院を含む,22ヵ所の大学病院,総合病院,公立・私立の精神科病院が登録している.上記のように,当院はI,II,III型の幅広い役割を期待されている.
 当院の身体科は,内科,神経内科,消化器外科,整形外科,脳神経外科,リハビリテーション科,麻酔科,放射線科,歯科はそれぞれ常勤医師が勤務し(歯科は外来診療のみ),形成外科,眼科,耳鼻科,皮膚科,婦人科,泌尿器科はそれぞれ非常勤医師が勤務する(形成外科以外は外来診療のみ).身体合併症病棟は3病棟あり,2病棟が精神病床(全86床,それぞれ41床,45床),1病棟(45床)が一般病床である.このほかに,結核モデル病床が18床あり,結核モデル病床をもつ1病棟(45床)は,2020年の新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019:COVID-19)の流行を受けて,精神障害者のCOVID-19の治療を受け入れる病棟に運用が変更された1).本稿では,COVID-19病棟を除いた身体合併症病棟3病棟の構造と機能を論じる.
 これらの3病棟には常勤精神科医1名,非常勤精神科医1名,精神科専門研修医2名,内科医10名,外科医2名,整形外科医2名,脳神経外科医1名,形成外科医1名,リハビリテーション科医1名が配置されている.1人の患者を身体科と精神科の主治医が担当し,協働して診療にあたる体制をとっている.身体合併症病棟の看護配置基準は13対1で,当院看護部門は,全員が正看護師以上の資格をもち,看護助手はいない.精神保健福祉士は3病棟に対して常勤1名,非常勤1名の配置である.

2.人口統計学的属性と医療経済指標
 2019年度,当院の身体合併症病棟の新規入院患者総数は1,099名であった.性別は男性596名,女性503名,平均年齢は63.5歳であった.
 病床利用率は66.3%,平均入院日数は33.4日であった.身体合併症病棟の患者1人あたりの診療単価はスーパー救急病棟群(平均34,236円)に次いで高く,2019年度は内科系精神病床で24,600円,外科系精神病床で28,694円,内科外科混合の一般病床で30,365円であった.特に,入院基本料と食事料を除いた患者1人あたりの単価でみると,院内の他病棟が3,500円に満たないことに比べて,合併症病棟では内科系精神病床で8,383円,外科系精神病床で12,365円,内科外科混合の一般病床で11,165円であった.これらの値はデータが抽出できた2016年度以降,同程度の水準で推移した.合併症病棟の患者1人あたりの平均診療単価が高いことは,診療密度が高いことによると考えられる.しかしながら,身体疾患を扱う総合病院の患者1人あたりの平均単価が70,000円程度であり,大学病院では80,000円程度であることに比べると著しく低いといえる.
 患者1人あたりの診療単価は高いが,利益率ということでみると,身体合併症病棟は人件費と経費が大きく,院内で最も利益率が低い病棟群である.当院合併症病棟の2019年度の利益率は-94~-85%であった.
 3.入院患者の疾患内訳
 2019年度,当院の身体合併症病棟に入院した全患者の精神障害の内訳(ICD-10)を図1に,身体疾患の内訳を図2に,精神障害と身体疾患の組み合わせを図3図4に示した.精神障害の内訳は,統合失調症圏(F2)が34%を占め,次いで認知症を含む器質性精神障害(F0)18%,アルコール依存症を含む精神作用物質による精神障害(以下,物質関連障害)(F1)13%,気分障害圏(F3)7%,精神遅滞(F7)6%であった(図1).精神障害なしが18%を占めるが,これは身体合併症病棟群のうちの1病棟である一般病棟で,近隣住民への医療サービスの提供を目的として,精神障害をもたない患者の身体治療のための入院を提供していることによる.
 2019年度,身体疾患の内訳は,消化器科疾患19%,整形外科疾患15%,呼吸器科疾患13%,外科疾患12%,腎臓内科疾患6%,脳神経外科疾患6%,その他29%であった(図2).その他には,水中毒や摂食障害など身体的要因と精神的要因が密接に絡み合った身体状態の悪化,あるいは,緊張病性昏迷やリチウム中毒のように,身体症状と精神症状との区別がつきにくい病態が含まれた.
 2019年度,精神障害別の内科疾患内訳では,統合失調症圏の患者の消化器科疾患(高度便秘症,麻痺性イレウスなど)が最多で67名,物質関連障害の患者の消化器科疾患(消化管出血,肝硬変など)60名,統合失調症圏の患者の呼吸器科疾患(誤嚥性肺炎など)50名がこれに続いた(図3).
 精神障害別の外科疾患の内訳は,精神障害をもたない患者の胆石症およびヘルニアに対する都立多摩総合医療センターからの手術依頼が圧倒的に多く,2019年度の同手術の実績は82名であった(図4).次に多いのは,統合失調症圏の患者の整形外科疾患(骨折)64名,器質性精神障害(主に認知症)の患者の整形外科疾患(骨折)31名であった.
 2019年度,担当診療科(主科)は,内科が709名(65%),整形外科が157名(14%),消化器外科が140名(13%),脳神経外科が71名(6%),その他が22名(2%)であった.その他のなかには形成外科が含まれる.形成外科で行う褥瘡治療の需要は非常に多く,褥瘡治療チームの介入は身体合併症病棟の入院全体の8%に及び,形成外科手術件数23件のほとんどが植皮術だった.2019年度,入院患者の手術実績は279件(25%)であった.

4.入退院動態
 2019年度の入院経路は,前述の「合併症ルート」が23%,院内転棟が11%,総合病院など精神科病院以外の医療機関からの転院依頼により,受け入れる経路(以下,「非合併症ルート」)が10%,自宅・施設が56%であった(図5).退院経路は,「合併症ルート」によってもとの精神科病院に戻るケースが20%,院内転棟が14%,「非合併症ルート」が7%,自宅・施設が54%,死亡が5%(52名)であった.

5.経年変化
 合併症病棟における新規入院患者総数は,2012年度807名,2013年度923名,2014年度962名,2015年度1,014名,2016年度1,129名,2017年度1,157名,2018年度1,153名,2019年度1,099名であり,2016年度以降,年間約1,100名の新規入院があった(図6).年齢階級別推移をみると,65歳以上の高齢者が入院に占める割合は,2012年度以降50%前後で大きな変化はないが,実数でみると,65歳以上の高齢者の入院は,2012年度の322名から,2019年の504名となり,1.5倍に増加していた(図7).高齢者のなかでも75歳以上の増加が目立ち,2018年度以降は75歳以上の高齢者が30%を超えるようになった.
 平均入院日数は,2012年度61.9日,2013年度60.1日,2014年度56.1日,2015年度57.0日,2016年度52.7日,2017年度45.7日,2018年度39.8日,2019年度33.4日と短縮していった(図8).
 病床利用率は,2012年度70.0%,2013年度70.2%,2014年度65.7%,2015年度62.0%,2016年度64.7%,2017年度57.8%,2018年度59.3%,2019年度66.3%と横ばいであった(図9).
 身体拘束率(期間中の身体拘束件数÷期間中の新規入院患者総数×100)は,2012年度37.5%,2013年度35.7%,2014年度34.0%,2015年度25.0%,2016年度26.0%,2017年度16.0%,2018年度20.0%,2019年度21.0%と減少し,最近は20%近くで推移していた(図10).

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II.考察
1.疾患の特徴
図1にみるように,身体合併症病棟ではあらゆる精神障害の,急性期から慢性期に至るあらゆる病期を扱う.精神症状の改善なしに身体疾患の治療が進捗することは難しく,重篤な身体合併症を抱える患者に対する精神科薬物療法の技術が必要である.
図3, 図7にみるように患者の高齢化を背景に,内科領域では,終末期の認知症および統合失調症患者の繰り返す誤嚥性肺炎や,看取りのための入院が多かった.また図4のとおり外科領域では認知症および高齢化した統合失調症患者の骨折や消化器癌のための入院が多かった.一方で,救命救急センターを併設する総合病院の身体合併症病棟に比べて,自殺企図後の多発外傷や中毒の症例は少ないと考えられるが4),他院の救命救急センターに搬送された自殺企図患者の転院を受け入れ,リハビリテーションなどを行っている.
 受け入れが最多であった疾患の変化としては,疾患内訳の統計を取り始めた2017年度と2018年度は統合失調症圏の患者の呼吸器科疾患,特に誤嚥性肺炎が最多であったが,2019年度は統合失調症圏の患者の消化器科疾患が最多となった.変化の背景には,新しい非刺激性下剤が相次いで発売になり,イレウスの内科的治療の可能性が広がったこと,加えて,内科で受け入れた消化器科疾患が外科手術の適応であった場合は院内で速やかに外科に転科できる体制が整ったことで,受け入れ可能な消化器科疾患の範囲が拡大したことがあると考えられる.

2.ケースワーク
 当院では,身体合併症病棟で受けた入院は,身体合併症病棟から退院することを原則として,退院後の生活につなげるリハビリテーションとケースワークを行う方針としている.原則,患者を転棟させない理由として,身体合併症をもつ精神障害者のケースワークの難しさがある.
 65歳未満の場合は,精神障害者にかかわる医療・福祉制度を利用することが想定されているが,これらの制度は,比較的若年で身体的に健康であることを想定しているため,身体合併症がある場合に利用が難しいことが珍しくない.一方,65歳以上の場合は,介護保険制度を利用することが想定されているが,同法は精神障害の存在を想定していない.このため,入院が必要になる程度の重篤な身体合併症をもつ精神障害者のケースワークを,身体合併症の扱いに慣れていない病棟で行っていくことは現実的に難しく,不十分なケースワークが退院直後の身体状態の悪化による再入院にもつながっていた.身体合併症病棟の精神科医と精神保健福祉士は,身体科医や病棟スタッフの理解のもと,入院を受ける段階から治療ゴールを設定し,関係機関との調整を開始することで,身体合併症病棟から直接退院させることを方針にしている.このような積極的なケースワークの結果は,平均入院日数の短縮として現れた(図8).
 当院以外の身体合併症病棟にとってもケースワークは共通の課題であり,退院先をいかに確保するかが問題になっている.東京都,神奈川県など都市部では身体合併症医療体制の発展により,身体治療終了後に依頼元に戻る原則がある程度確立しているが11)14),医療資源の限られる地方では,個々の病院間での連携が必要となっている9)

3.病床利用率
図9のように病床利用率は65%前後で推移した.入院患者数の増加を上回る平均在院日数の短縮があり病床の回転率が上がったため,病床利用率は上がらなかった.それ以外の要因としては,病棟の構造上の問題や看護配置基準の問題がある.身体合併症病棟はICUユニット4床,観察室ユニット4床を有するが,外科系病棟にあるICUユニットを運用するには看護師数が足りず,観察室は術後の一時使用以外に適した用途がないが内科系病棟に設置されている.
 当院の身体合併症病棟における看護配置基準は13対1である.急性期の一般病院では7対1看護,10対1看護が導入されていることを考えると,身体的ケアに加え,精神症状への対応も行う身体合併症病棟において,一般病院よりも少ない看護師数で対応するには限界がある.身体合併症病棟では,患者が精神症状のために治療の意義を理解し協力することが難しいことはしばしばあり,ベッドからの転落,あるいは転倒,骨折や術後の安静保持の困難,点滴ルート・経鼻胃管・尿カテーテルなどの自己抜去がしばしば発生する.当院の身体合併症病棟でインシデントレポートの発生件数と在患数の関係を調査した結果,看護配置基準が7対1に相当する在患数より多くなると,7対1に相当する在患数以下のときと比べて,インシデントレポート発生件数が有意に多くなった(P=0.05).身体合併症医療における看護配置基準の低さは,当院に限らず他の身体合併症病棟でも大きな障害となっている5)8)

4.意思決定支援
 2019年度の身体合併症病棟での看取りは入院全体の5%(52名)であった(図5).人生の最期においては,どれほど重い精神障害があったとしても,本人の意思は尊重されてしかるべきである.当院の身体合併症病棟では,身体合併症医療に患者自身が参加し自ら医療上の意思決定を行うという,あたり前の医療の実践をめざしている3).同意能力が欠如しているために入院加療に同意できないという判断のもと,医療と保護の対象とされる精神科の非自発的入院下で,身体合併症医療に関する本人の意思をどのように扱っていくべきなのか.
 まず,患者本人が治療に参加することを可能にするためには,精神科医療によって,今望みうる最良の精神状態をつくることが必要である.そのうえで,本人の希望,身体症状,精神症状,社会的環境などを調整しながら意思決定支援を行う必要がある.そのために,個々の患者について,本人,家族,病棟スタッフ,身体科医,精神科医で話し合う場を積極的に設けている.

5.精神科病院との連携
 「合併症ルート」の依頼元の精神科病院との連携を深めることを目的として,年2回,身体科・精神科合同の症例検討会を行っている.毎回精神科病院に勤務する多職種の30~50名が参加している.これまでに,統合失調症患者の呼吸器疾患,認知症患者の終末期医療,イレウスと下剤,褥瘡の予防と早期治療,リチウム中毒後遺症などのテーマを扱った.身体合併症医療は依頼元と受入先の精神科病院との協力があってはじめて成り立つ.定期的な交流機会が連携強化につながると考えられる.

おわりに
 精神障害者の身体合併症への対策が求められるなか,東京都立松沢病院における身体合併症医療への取り組みと課題を述べた.精神障害者も当然,適切な身体合併症医療を受ける権利がある.その権利を実現するためには,国,地域,病院が協力して充実した身体合併症医療体制を構築する必要がある.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

 謝 辞 データの収集に際して,身体合併症病棟の看護師長の方々,業務改善推進室の竹田功氏,唐津洋志氏に多大なご協力をいただきました.この場を借りて感謝申し上げます.

文献

1) 福田陽明, 邊土名智代, 今井淳司ほか: 東京都立松沢病院における新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019: COVID-19)患者の受け入れについての中間報告. 精神経誌, 122 (10); 749-756, 2020

2) 八田耕太郎, 平賀正司, 中村 満: 東京都における精神科患者身体合併症医療事業. DEPRESSION JOURNAL, 5 (1); 32-35, 2017

3) 井藤佳恵: 誤嚥性肺炎を繰り返す統合失調症患者 統合失調症患者の身体合併症医療に関する意思決定支援―主体性の回復という観点から―. 老年精神医学雑誌, 29 (8); 865-873, 2018

4) 井上幸代: 精神身体合併症専門病棟としての病棟運営. 救急医学, 41 (5); 518-524, 2017

5) 木下真也: 精神病棟における身体合併症例の現状. 精神経誌, 118 (9); 695-700, 2016

6) 丸山二郎: 東京都の精神科身体合併症医療―松沢病院内科医からみて―. 医療, 70 (10); 409-412, 2016

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