本論では,さまざまな抑うつ状態の診断において,心理的な了解(および了解不能)が果たす役割について論ずる.まず,現在の臨床においても実質的には了解に基づく病態評価は行われているし,それが必要でもあることを指摘する.続いて,伝統的に内因性うつ病と呼ばれてきた状態は,誘因と症状との間に時間的および意味的な対応関係が欠如していることと,心理的に落ち込むだけではなく身体を巻き込んだ症状として体験されることで特徴づけられることを確認する.とはいえ,誘因と症状との関係は難しい問題であり,その都度患者の状態をよく確認して慎重に判断する姿勢が必要となる.了解可能性(および了解不能性)による抑うつ症状の把握は,一度典型的なパターンが見つかれば終わるものではなく,現代でも臨床的に開かれた問いを発し続けることを,本論の後半で論ずる.
了解概念からみた内因性うつ病
東京農工大学保健管理センター
精神神経学雑誌
123:
801-806, 2021
<索引用語:生気的抑うつ, 悲嘆反応, 発生的了解, 意味連関, 精神病理学>