Advertisement第117回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第122巻第12号

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特集 精神科医療における身体拘束の現状と課題
わが国の精神科医療における身体拘束の問題点
長谷川 利夫
杏林大学保健学部作業療法学科
精神神経学雑誌 122: 938-945, 2020

 精神科医療の「強制力」の淵源は国家である.精神保健指定医はその権限の一部を与っている.身体拘束は人権を制限するものであり,薬の処方と異なりそもそも縮減が志向されるものである.しかしながらわが国の精神科医療における身体拘束の実施数は,10年間で2倍に達した後,高止まりとなっている.その実施期間も諸外国に比べ長いことが明らかになっている.630調査から各都道府県別の「入院患者数に対して身体拘束をされる率」(身体拘束率)を求め,χ2検定を行い,さらに残差分析を行ったところ,各都道府県の身体拘束率は10倍以上開きがあり,身体拘束率が有意に高いのは12県でその多くが東日本であり,有意に低いのは23県で多くが西日本であった.ニュージーランドでは,隔離率の地域差が11倍という調査もあり,行動制限の最小化には,「慣習」「職場のやり方」「異なるモデル」が関連している可能性がある.また,行動制限の最小化には「患者も変化の過程の一環として捉えること」も重要だが,これはリカバリー概念とも通じる内容である.最小化の実現のためには理論と実践を結び付けていく必要がある.障害者権利条約の考えからすれば,精神障害者であることを理由とする行動制限が条約違反との指摘もある.国内の死亡事例からは,わが国は自己情報コントロール権が確立していないなど,社会や意識における後進性が見て取れる.「専門性」を超えた開かれた議論が強く望まれる.

索引用語:身体拘束, 隔離, 精神保健, 行動制限, 障害者権利条約>
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