Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第8号

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特集 非自発入院制度の現状と課題―精神保健福祉法改正,措置入院,および臨床倫理をめぐって―
措置入院の臨床的機能と臨床医のジレンマ
白石 弘巳
東洋大学ライフデザイン学部,現・埼玉県済生会鴻巣病院
精神神経学雑誌 120: 680-686, 2018

 著者は,勤務先の精神科医療機関,精神科救急医療機関における夜間・休日の当直時,在宅(訪問)などで措置入院のための精神保健診察を約150例経験した.措置入院の要件は「精神障害者であり,かつ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認める」(精神保健福祉法第29条第1項)ことにつき,2名の精神保健指定医の診察結果が一致することである.国はその要否の判断の基準を示している(厚生省告示第125号)が,要否の決断に至るまでに苦慮することがまれならずある.著者が経験した事例をもとに架空の例を作成し,問題となる状況を①必要な情報が得られず診断に躊躇する事例,②自傷・他害のおそれの認定が困難な事例,③精神疾患と自傷・他害のおそれは認定できるが,精神疾患に由来するとすべきか困難な事例,④精神疾患と自傷・他害のおそれが存在するが入院を求めて故意に行っている事例,⑤精神科病院での治療が適当か疑問が残る事例,に整理し,改善の方策について考察した.

索引用語:措置入院, 精神保健指定医, 精神保健福祉法, 精神保健診察, 自傷・他害のおそれ>

はじめに
 著者は,現在教育機関に身をおいているが,これまで私立精神科医療機関(約4年間),自治体立医療機関(約6年間)で臨床に従事し,その後東京都における年数回の精神保健診察業務(約9年間)や月2回程度までの東京都精神科救急当直(約4年間)などの場での経験と併せ,精神保健指定医(以下,指定医)として計150例ほどの精神保健診察にかかわってきた.本稿では,措置入院の要否の判定の際に,臨床医が困惑させられる状況について自験例をもとに作成した架空事例を提示し,若干の考察を加えてみたい.

I.問題の所在
 現行の措置入院制度では,指定医に入院の要否の判断が委ねられている.すなわち,措置入院の要件は,対象者が「精神障害者であり,かつ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある」(精神保健福祉法第29条第1項)か否かについて,2名の指定医が診察を行い,判定結果が「要入院」で一致することである.指定医は厚生労働大臣が指定する資格であり,指定医が厚生労働大臣が定める基準(昭和63年4月8日厚生省告示第125号)に則って,特段の作為や不作為なく下した判断は通常疑う余地のないものとして扱われる.措置入院のための診察は,精神保健診察の手続がとられたあとは,その日のうちに入院の要否の判定が行われ,決着がつくことが原則となっている.精神保健診察の実施に先立ち,自治体職員は実施の妥当性を担保し,診断の際必要となる医学上の情報収集を兼ねて事前調査を行っている.しかし,精神保健診察の場で,指定医が改めて措置診察に至った経緯について疑義を感じたり,精神疾患の診断や自傷・他害のおそれの判定を困難であると感じたりする事例が存在する.その場合,指定医が精神保健診察を実施することに対して抱いた疑義や,自身の判定に対する自信のなさなどは,指定医が書く入院届のなかでは触れられず,入院届には,最終的な判定結果と矛盾しないように所見が書かれることになる.かつて,ニューヨーク法科大学のPerlin教授は,このような後付けの「つじつま合わせ」をpretextualityと呼んだ2).Perlin教授は裁判の判決文についてpretextualityという言葉を使ったのだが,指定医の診断書にも同様のことがないとはいえない.これまでに措置入院の診断書を大規模に収集して,措置入院の「入り口」の状況について整理する調査研究が行われたこともあったようであるが,診断書が書かれる前の指定医の胸の内まで踏み込むのでなければ,実態がみえてこない可能性がある.本稿では,このような認識から,指定医が判定に悩み,躊躇の気持ちを残しながらも「つじつま合わせ」の入院届を書くに至る事例の状況に焦点をあててみたい.
 精神保健診察において,指定医は2種類のジレンマに直面すると考えられる.それは,内的ジレンマと対外的ジレンマである.内的ジレンマとは,判断材料が十分ではない状態で,診断や処遇を下さなくてはならない指定医の良心に関することがらである.具体的には,厚生労働大臣が定める自傷・他害のおそれを,対象者に認定すべきかの判断が容易ではない場合が相当する.一方,対外的ジレンマは,対象者の人権への配慮と入院先の医療機関からの指定医の入院判断に対する異議をおそれる気持ちと,入院としない場合に本人または第三者に生じる損害の可能性との間で生じる葛藤である.要するに,精神保健診察の場面で指定医は,十分な情報がないなかで,入院させる,させない両面からの圧力を感じつつ,制度のあるべき姿に照らして妥当性のある判定を下さざるを得ない状況におかれる.指定医2名が一致しないと入院には至らないという規定は,決して指定医の負担を軽減するものではない.
 以下,かつて著者が経験して悩んだ事例をもとにして架空の例を作成し,指定医がジレンマを抱きやすい状況についていくつかのパターンを提示する.

II.指定医が判断に躊躇する状況
1.診断をつけることが困難な状況
 精神保健診察の際,診断を下すのに十分な情報が提供されるとは限らない.例えば,以下のような状況が考えられる.

 【事例A】通行人にさしたる理由なく暴行を振るい,現行犯で逮捕されたホームレスの男性.逮捕後の挙動がおかしいということで警察官通報され,精神保健診察に至った.本人を知る関係者がおらず,診察に至るまでの経過は不明で,質問には対しては答えず,何度も質問すると「ご想像にお任せします」と言う.

 【事例B】繁華街で見知らぬ人を殴り,警察に保護された外国人男性.日本語で会話できず,関係者も同伴してきていない.かろうじて確保できた通訳を介して話を聞いたが,通訳も「変なことを言っている」と言うばかりで要領を得ず,医師が知りたい診断のための情報が得られない.

 挙動に不審な点がみられても,それだけで精神疾患と診断できるとは限らない.併せて本人や周囲から,より適切な情報が得られなければ,限られた情報をもとに結論を出さざるを得ないこととなる.このような場合,判断保留という判定の選択肢があったら,指定医の負担はかなり軽減されるだろう.精神疾患の存在が極めて疑わしいが,精神保健診察の場で診断保留と判定される場合に,短期間に限り,人権への配慮を行ったうえで,処遇確定のために入院させ,行動制限などを極力行わないようにして経過をみる制度の導入は絵空事であろうか? 類似の制度として,医療観察法の鑑定入院や旧法下で存在した仮入院制度がある.実務的には緊急措置入院者や応急入院者に72時間以内に再診察を行って最終的な処遇を決めていることに準じればよいのではないだろうか?

2.自傷・他害のおそれの判定が困難な状況
 一般に,自傷・他害の要件は,該当する言動が警察官保護等の契機となっていることから,ある程度客観的に把握されていることが多い.しかし,以下のような事例の場合など,その「おそれ」の有無や程度が必ずしも確実とはいえない場合も存在する.

 【事例C】深夜,無灯火で自転車に乗っていて警察官から職務質問を受けた男性が,質問の途中,その場を立ち去ろうとしたために保護された.警察官が本人のバッグ内を点検すると所持品のなかに精神科クリニックの診察券とバタフライナイフ,金づちが見いだされた.本人は統合失調症で治療を受けていることは認めたが,ナイフなどは「たまたまもっていただけ」だという.しかし,警察官は,公務執行妨害や銃刀法に違反する行為であるとして,他害のおそれを認定し,警察官通報に至った.

 【事例D】初老の女性.ある私鉄の線路内をとぼとぼ歩いているところを,駅員に保護された.その際,「愛猫が死んだので,自分も後を追って自殺しようとした」と言ったため通報された.独居で身寄りがなく,本人の生活状況を詳しく知る人はいない.この女性は,精神保健診察の場面で,精神疾患の治療歴を否定し,希死念慮については「冗談で言っただけです」と言ってその存在を否定した.問診しても病気の症状は明らかにならず,他に得られる情報がなく,診断も希死念慮の存在の確定も困難に感じられた.

 措置入院は,精神疾患の診断に加え,自傷・他害のおそれの存在を要件としている.しかし,上記2事例では,その存在を客観的に判定することに困難を感じる.また事例Dでは,保護された時点では希死念慮があったのかもしれないが,それを否定している精神保健診察時には軽減あるいは消失したとの見方もできなくはない.措置入院は,自傷・他害の「おそれ」が存在していることを入院の要件にしているが,事例のような状況で,本人や周囲の保護のために強制的に入院させることは,本人の人権侵害になる「おそれ」も同様に高いと考えられる.このような場合,入院不要と判定し,地域の支援者につなぐことを条件とすることが可能であれば,指定医の負担感は軽減されるであろう.

3.精神疾患と自傷・他害の連関についての疑問(その1)
 上記の4事例とは異なり,精神疾患の診断も自傷・他害の要件も満たしているといっても,その連関に確信がもてない場合がある.

 【事例E】アパートの契約更新をめぐって不満を言い,大家を威嚇し,顔面を殴打したとして,通報され保護された男性.不定期に精神科医療機関に通院し,自己愛性パーソナリティ障害と診断されていることがわかっている.警察官通報され,精神保健診察に至ったが,本人は「自分は悪くない,病気とは関係ない」と興奮気味に主張している.

 【事例F】統合失調症で通院中の30代の男性.煙草を吸いすぎて小遣いがなくなったとして,70代の母親に小銭を要求し,拒否した母親に暴力を振るったため,警察に保護され,精神保健診察に至った.診察時,「母親がわからず屋」だと自己の行為の正当性を主張している.診察時,特に幻覚や妄想が悪化したわけではなかった.

 上記の2事例では,病気の症状と行為が連動しているのか判断が難しい.従来,触法行為を犯した精神障害者の処遇の際には責任能力の有無が問題とされてきた.上記2事例は,「理非善悪」の判断がつかないという意味での責任能力の欠如にはあたらないと考えられる.しかし,他に加害者の行為を止め,被害者の安全を確保する方法がないと考えられた場合,措置入院が受け皿として使われる(使われてきた)可能性がある.最近は,精神障害者であるか否かを問わず,高齢者(老親)に暴力を振るうと高齢者虐待防止法を適用して,加害者ではなく,被害者を保護するという選択肢がとられることがある.しかし,現行の措置入院制度では,加害者を逮捕・起訴させるべきとか,被害者を保護させるべき,などの意見を精神保健診察の結論とする選択肢は許されていない.無理な願いであることは理解しているが,これまで精神保健診察を行った事例のなかに,起訴前鑑定を行って処遇を決めるよう警察や検察に差し戻す選択肢を指定医が与えられていたら,と考えることがあったことは事実である.

4.精神疾患と自傷・他害の連関についての疑問(その2)
 事例E,Fと似ているが,別の要素を含んだ事例にもときどき遭遇することがある.例えば,以下のような事例である.

 【事例G】軽度の知的障害のある中年男性.商店のガラスを故意に割り,警察が注意して帰宅させたところ,その直後に別の商店のガラスを割った.本人は「イライラしてやった」というが所持金が少なく,以前にも同様の行為を行い入院歴あった.

 【事例H】大都市のターミナル駅で,バスの前に寝転がって交通の妨害をしたとして警察に保護された男性.統合失調症で通院歴があるも,幻覚や妄想の存在は否定.本人は「精神科病院の不正をただすために,何とかしてもう一度入院をする必要がある」と寝転がった動機を語った.

 上記2事例は,精神疾患は存在するが,責任能力という面では問題がなく,むしろ他害行為(迷惑行為)を故意に行うことによって,精神科病院への入院を画策していると判断される.事例Gでは,金銭がなくなったときなど,過去に同様の行為を行い,措置入院になったことがあることから,生活が破たんした場合の「安全網」として入院が利用されていると考えられる.同様に,所持金が底をつくと意図的に無銭飲食を行って刑務所への入所を繰り返している知的障害者もいるようである.こうした人の触法行為は厳しく責任を追及されるべきであるし,行った行為が無銭飲食程度であるならば,ホームレスや触法精神障害者の社会復帰を支援する団体などに支援を依頼することが最善なのではないかと考える.上記のような事例を措置非該当と判定した場合,同伴してきた警察官に不満そうな表情をされることがある.現場での負担に同情は禁じ得ないが,措置入院を目的外に使うことがあってはならないことを理解してもらうしかないであろう.

5.精神科病院で対応すべきか迷う事例
 精神疾患が認められ,自傷・他害が認められても,以下のように,精神科医療機関での入院治療の対象として適当であるかどうか意見が分かれる事例がある.

 【事例I】DVを理由に女性に交際を断られた男性.自宅から女性に「今から死ぬ」「手首を切った」などと電話した.男性は女性を自宅に来させる目的で電話したもようであるが,女性は男性の自宅には赴かず,救急隊に男性の保護を要請した.救急隊が自宅に赴くと,男性は「お前らには用がない」などと興奮して暴力を振るい,対応に窮した救急隊が警察に通報し,精神保健診察に至った.

 【事例J】境界性パーソナリティ障害の女性.同居の男性と口論になり,午後10時過ぎに4階の部屋から飛び降りようとして男性に制止され,救急外来に連れてこられた.「私は何でもない」「死にたい気持ちもない」と言いながら,当直医を蹴飛ばすなどの行為を繰り返した.男性は内縁関係で,女性の親族は遠方にいて,事実上音信不通であるという.精神科救急の当直は,女性を帰宅させることは困難と判断したが,家族などの同意による医療保護入院も困難と判断し,困惑した.

 事例I,Jは,現実の男女問題が色濃く絡んでいる.事例Iの男性は自傷行為があるものの,精神疾患があると診断して,精神科治療を行うことが適当であるのか,判断に苦しむところである.今後,保護と対人関係の調整も精神科治療の範疇であると言って間口を広げるか,逆に,自傷・他害があっても男女のもつれなどの事例は治療の対象外であるという姿勢で臨むか,議論が必要ではないだろうか? 現状では,男女のトラブルの場合,事例Jのように,事実婚である場合や,婚姻状態にあっても争いがある配偶者の同意で医療保護入院させることを躊躇する場合,措置入院が入院させるための「方便」として使われる可能性もないとはいえない.指定医が入院と判定したことを入院先の医療機関から責められないように,こうした事案の対応について関係者間で合意形成を図れるとよいと思う.

III.措置入院の「入り口」問題
 以上,措置入院の入院決定に至る前に指定医が困惑する状況について素描してきた.たとえ数は少なくとも,上述したような事例について,指定医の裁量に委ねられるとき,指定医は診断や処遇をめぐって,困惑させられ,負担を感じることが想定される.経験のある指定医のなかには,①診断を保留にしたくても回答を迫られる,②措置入院が最善ではないと思いつつ入院以外の選択肢がないなかで要否のみの決定を迫られる,という状況におかれ,躊躇しつつ判定を行ってきた人もいるのではないだろうか?
 仮に,措置入院の決定は患者の表出された意思に反しているが,患者の真の利益に沿った決定であるという立場から,その決定は不利益処分とはいえないという立場に立つにしても,それは典型的な措置入院事例の場合であって,今回提示した事例に対する指定医の裁量までを正当化することは別問題のように思われる.知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」の事件以来,国は措置入院の解除のあり方や退院後の継続支援のあり方について重点的に検討してきたが,この機会に「入り口」のあり方についても同様に再点検する必要があると考える.
 その際,「入り口」問題を個々の指定医の力量不足に帰してしまうと,指定医の指定要件の厳格化や研修強化,あるいは自傷・他害要件の見える化(アンカーポイントの明示や評価スケール)の導入による客観化などの対応が想定されてくる.しかし,上述の事例の背後には措置入院制度や運用のあり方に由来する問題があると考えるのが妥当である.すなわち,判断に必要な時間(診察時間)や情報が乏しいことが多い,判断の選択肢が乏しい(入院させるためだけのシステム)ことなどが,より的確な診察結果やより適切な処遇を生むことを阻んでいると考えるべきではないだろうか.前者については,診断や処遇を決めるための必要最小限の時間の確保,後者については精神科病院への入院のみではない処遇の選択肢の構築が懸案となる.昨今,措置入院退院後の継続的支援を強化することが模索されている.これは,従来措置入院が「おそれ」の段階でも入院を指示できる反面,「おそれ」が消失したら速やかにそれを解除するとしてきたことと矛盾する.新しい考え方が導入されるのであれば,「入り口」問題にも新しい考え方が導入されてしかるべきである.そのようなものとして,医療観察法にならい処遇の決定に指定医以外のステークホルダーが参画すること(地域の支援者も交えた「チームアプローチ」)や,最近注目を浴びているオープンダイアローグを利用して本人の希望を容れながら,入院前に十分対話を尽くしてから判定を下すことなども考えられてよいのではないか.オープンダイアローグの創設にもかかわりがあるとされるリフレクティングチームの生みの親であるアンデルセンは,かつて,著者に,ノルウェイには入院が必要な人がいると,担当者がその人の自宅を訪問し,日が暮れると引き上げ,翌日また来て,本人も交えて最善の決定をする努力をしている地方があると語っていた.精神科病院への入院時,身体拘束が増えているといわれる昨今,本人,関係者も含めた対話のなかで処遇を決定するという運用は,身体拘束の抑制にも一役買うことになるのではないだろうか?

IV.指定医のジレンマの解消に向けて
 以上述べてきたことを,実際の制度設計に組み入れ,運用までもっていくことは簡単ではないかもしれない.しかし,措置入院であっても,本人の利益のために運用するという機運が芽生えている今日であれば,まったく荒唐無稽な話ではないとも考える.
 具体的には,警察官などに保護された人について,指定医の診察の前に,もっと調査に時間をかけ,本人の精神症状のみならず,生活状況なども明らかにしたうえで,最善の処遇を提案していくことを優先し,措置入院を他に治療や地域生活のための支援方法がないときのlast resortと位置づけることが望ましい.群馬県では,精神保健診察に移行する前の事前調査が充実しているとの報告1)があるので,そうした先行実践から多くを学ぶことができるのではないかと考える.
 こうした調査を一定の期間にわたって続ける必要があると判断された場合,本人の安全に対する配慮が必要であれば,精神科病院に「精神保健診察入院」という一種の仮入院制度を設けて,治療ではなく処遇診断を行うようにする方法はどうであろうか? 実施の要領は,緊急措置入院や応急入院の72時間以内の再診察に準じれば,それほど負担のかかるものではないのではないだろうか? また,処遇としては入院治療以外の選択肢も設け,自傷・他害のおそれが続き,それを入院以外の方法で解決できないと認められたときのみ,現行の措置入院を命令するようにしたらどうか.このような判断の際,都道府県知事の命令を精神医療審査会が直ちに審査し,承認した場合,その決定内容を対象者に伝えていく仕組みとすることが望ましいと考える.

おわりに
 措置入院の入院決定に至る過程で,制度上の欠陥から,的確な診断が行えないまま決定が行われたり,入院以外の選択肢がないために不適切な処遇が生じる可能性があることを指摘し,現行の措置入院制度については,「出口」のみならず,「入り口」の問題にも目を向けるべきことを訴え,若干の改善案を提示した.本人が利益を実感できる精神科医療を行うために,精神科医が声をあげていくことが必要と考える.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

1) 芦名孝一: 緊急避難としての「措置移送」とそれを補完する予防的介入について―群馬県における行政型アウトリーチの実践と課題―. 精神科治療学, 31 (増刊号); 341-344, 2016

2) Perlin, M. L.: The Hidden Prejudice: Mental Disability on Trail. American Psychological Association, Washington, D. C., p.59-75, 2000

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