Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第3号

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特集 神経症性障害はどこまで薬物療法で治せるのか―その限界と多角的治療の実際,そして可能性―
強迫症(OCD)に対する薬物療法の意義と限界,そして最適化に必要なこと―OCD患者の横断的・縦断的特性に関する多様性を中心に―
松永 寿人
兵庫医科大学精神科神経科学講座
精神神経学雑誌 120: 186-194, 2018

 強迫症(OCD)治療において,寛解や再発予防をめざし予後を良好なものとする上で,認知行動療法(CBT)が重要となる.しかしCBTへの導入や継続を支持し,有効性を最大化するためには,SSRIなど薬物療法を先行させ,不安の軽減や動機づけの強化を図ることが不可欠と考える.現時点ではこの限界も明白であるが,薬物療法の最適化にはcomorbidityといった背景にある精神病理,発症後の未治療期間,あるいは慢性化に伴う脳内メカニズムの可塑的変化など,個々のケースにおける横断的,縦断的特性に配慮することが必要である.すなわち薬物療法の効果が不十分な場合,これらを慎重に評価し適切な治療選択を再考すべきであろう.今後OCDのさらなる生物学的機序の解明,あるいはグルタミン酸系作動薬,ニューロモデュレーションなど新たなアプローチを含む治療ストラテジーの検討や展開において,このようなOCDの多様性を考慮することが重要になるものと思われる.

索引用語:強迫症(強迫性障害), 薬物療法, 認知行動療法, コモビディティ, 神経可塑性>
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