Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第120巻第1号

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特集 妊産褥婦のこころを支えたい―今,精神医療に求められる周産期リエゾン活動―
精神科医は,母子保健とどのように連携していくのか?―松戸市の取り組みを例に―
渡邉 博幸
医療法人学而会木村病院
精神神経学雑誌 120: 52-59, 2018

 妊産婦のメンタルヘルス(MH)は,妊娠中の母児の健康,産後の養育,児の発達を左右する重要な支援課題である.精神疾患や精神的不調をもつ女性は,単にそれらの症状によって,妊娠・出産が困難となるだけでなく,例えば,望まない妊娠や,パートナーや家族の非協力,経済的困窮,産科的自己管理不十分などの特定妊婦としての心理社会的諸問題に陥りやすい.このように,妊産婦MHを実践する場合は,精神疾患としての疾病性と生じている心理社会的問題という事例性の双方を把握して,包括的な支援を計画する必要がある.しかし,妊産婦のMHを支えるための多職種連携は多くの実施上の困難を伴う.その要因として,①精神―周産期医療間,精神―母子保健行政間の専門性の違いによる連携不全,②支援のリレーが多くなり,情報や介入の分断が生じやすいという時間軸上の連携不全,③妊娠出産を機に生活拠点が移動することによる空間軸上の連携不全を挙げた.このような連携困難を打開するために,著者は千葉県松戸市における連携モデル構築を手がけた.このモデルは,①要保護児童対策地域協議会(要対協)に市内の医療機関ネットワークをつなげ,要対協と産科・小児科・精神科を含む医療機関との情報共有を行う,②精神科医が直接,母子保健の担当保健師に技術支援するという二本立ての連携構造をとっている.松戸市の連携モデルの利点は,地域の単科精神科医療施設でも積極的に参加することが可能なことである.

索引用語:妊産婦のメンタルヘルス, 疾病性と事例性, インター型多職種連携>
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