Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第6号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 発達障害治療のトピックス
睡眠障害と発達障害―どのように診立てていくべきか―
堀内 史枝1)2), 岡 靖哲2)3), 河邉 憲太郎1)2), 上野 修一1)
1)愛媛大学大学院医学系研究科分子・機能領域精神神経科学講座
2)愛媛大学医学部附属病院子どものこころセンター
3)愛媛大学医学部附属病院睡眠医療センター
精神神経学雑誌 118: 410-416, 2016

 神経発達障害,主に注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)に関連する睡眠障害には,生来性の睡眠の量や質の低下,睡眠覚醒リズムの構築異常,発達障害に並存する睡眠障害,発達障害の二次障害としての睡眠障害,二次障害の一症状としての睡眠障害,さらに発達障害の薬物治療に伴う睡眠障害があり多因子である.小児ADHDとの関連が深い睡眠障害としては,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)やレストレスレッグス症候群(RLS)が挙げられる.小児のOSASは低身長や認知機能・行動の問題,ADHD様症状や夜尿の遷延などの症状がみられる.アデノイド・扁桃腺肥大によるものが多く,外科的処置が第一選択となる場合が多い.ADHDとRLSでは共通して鉄欠乏やドパミン系の異常の関与が指摘され,合併頻度は予想以上に高い.RLSでは一般的に睡眠薬は無効であり,的確な診断が重要となる.小児ASDと関連の深い睡眠障害としては,不眠障害,睡眠時随伴症および概日リズム睡眠-覚醒障害などが挙げられる.発達障害児の不眠やリズム障害に対しては睡眠衛生指導や行動療法的介入が一般的であるが,薬物治療も必要となる場合がある.実臨床では眠気が目立ち,低覚醒状態ではないかと思われる発達障害児に遭遇する.発達障害児は過覚醒状態・低覚醒状態・混合状態であるとの説が存在し,今後発達障害と覚醒度との関連は注目すべきポイントである.ADHD治療薬である中枢神経刺激薬は不眠の原因ともなりうるが,逆にADHD症状の改善に伴い睡眠が改善するとの報告もある.一方,非中枢神経刺激薬は不眠を改善する場合があり,併存する睡眠の問題を考慮して診療する必要があるが,さらなる検討を要する.以上のように,睡眠障害が発達障害の症状を増幅している場合があり,睡眠障害の治療により発達障害の症状が軽減しうる可能性がある.睡眠障害をも念頭において,発達障害の日常診療を行う必要がある.

索引用語:睡眠, 注意欠如・多動症, 自閉スペクトラム症, 眠気, 覚醒度>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology