Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第12号

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特集 東洋的叡智と心理療法―思想,方途と目的地―
内観療法の思想的背景―西洋文化との比較およびヴェーバー理論の研究を通して―
長山 恵一
法政大学現代福祉学部臨床心理学科
精神神経学雑誌 118: 903-909, 2016

 集中内観の治療設定が巧妙に組み立てられているのは実践的で手続き的な知を重視する日本の文化伝統と深くかかわっている.西洋社会では概念的で合理的な説明が重視され,日本では実践的なワザの知が重視される傾向が強い.西洋と日本で知の評価が対照的なのは,究極者が西洋では論理的な秩序性にかかわるロゴスに,日本では呪術技術的なワザとの関連で把握されてきたことと関係する.2つの知のいずれにおいても知の構築化と脱構築の2つのモーメントがあり,知の変革・革新にかかわる脱構築は直感的で全体的な経験相であり,西洋のキリスト教社会ではそれは三位一体のヒュポスタシス・ペルソナで表され,日本では神道的な「すむ」で把握されてきた.両者はともに天地創造のモチーフとして「液体の中の沈澱」にかかわっている.精神療法の自己洞察のプロセスは患者の手続き的な知の脱構築の経験にほかならない.人間の2種類の知と知の構築化と脱構築のモーメントを論じたのがヴェーバー理論であり,彼の理論を精神療法の観点から論じることで,支配の正当性や天皇制の本質を理解するための新たな鍵を手にできる可能性がある.

索引用語:内観療法, マックス・ヴェーバー, すむ(澄む=住む), 三位一体論>
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