Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第11号

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特集 BPSDは誰が診るのか? 誰が診られるのか?
新オレンジプランからみるBPSD
玉井 顯
敦賀温泉病院
静岡大学
精神神経学雑誌 118: 834-840, 2016

 BPSDは誰が診るのか? 誰が診られるのか? を新オレンジプランの視点から論じた.すべての医師が認知症についての知識があり,他科専門領域と連携をとり,包括的に介護保険領域とも連携しながら治療にあたるのが理想である.BPSDが軽度で介護する側に負担がかからない時期であれば,かかりつけ医を主に,専門医と連携をとりながら診ることは可能である.しかし,重度のBPSD状態で介護困難な状況に陥った場合,非薬物療法での対応が第一選択になり,薬物療法は第二選択となることが多い.それでも対応が困難な場合には,精神科における認知症治療病棟(閉鎖病棟)での短期的入院が奏効する場合もある.認知症専門医となる医師は,精神科医,神経内科医,脳外科医,老年病科医および総合診療科に所属する医師が多い.そのなかで精神科医が認知症を診る役割の特性を挙げるならば,精神科医はBPSDの中心をなす精神症状を診る専門家である.また,抗精神病薬の使用頻度は他科と比較して圧倒的に高いので,症状に応じた抗精神病薬を処方することに特化している.重度のBPSDの際には,必要に応じて閉鎖病棟での最小限の入院治療も可能である.つまり,認知症疾患において,精神科医は認知症を診ていく上で他科とは異なる重要な立場にあり,認知症患者の全病期にわたり対応が可能な診療科は精神科であると思われる.認知症専門医ばかりでなくすべての医師が認知症に関心をもち,たとえ認知症であっても通院や入院,入所を拒否されることがない地域が全国に広がることになるのを著者は祈念している.認知症にかかわる課題は医療や介護だけでなくあらゆる立場の人が社会全体で認知症をみるという姿勢でかかわっていくことが最も重要であろう.

索引用語:新オレンジプラン, 認知症, BPSD, 循環型, やさしさ大国>
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