Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第7号

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会長講演
第110回日本精神神経学会学術総会
うつ病診療―混乱から地域連携へ―
宮岡 等
北里大学医学部精神科
精神神経学雑誌 117: 544-549, 2015

 北里大学医学部精神科では北里大学東病院精神神経科と北里大学病院精神神経科を中心に,地域連携を重視した医療を行っているが,この中でうつ病に関して行ってきた活動や問題点などをとりあげる.1.当院は市民病院のない政令指定都市であり,神奈川県内では比較的医療機関の少ない相模原市にある.2.北里大学東病院精神神経科は94床の閉鎖病床をもち,神奈川県精神科救急基幹病院である.3.約10年前の相模原市近辺の精神科地域医療では,外来レベルでの医療機関の連携,身体合併症医療,精神科医療の質の向上と均てん化,精神科救急医療,医療機関別にみた医師の収入と労働量のバランスなどが大きな問題となっており,筆者はすべてに関連する最重要課題を精神科医療の質の向上と均てん化であると考えていた.4.うつ病においては,解決すべき問題として,不適切な薬物療法があり,それらは精神医学・精神科医療の動向,医療機関の問題,医師の姿勢,行政との関係,患者の姿勢などが関係していた.5.このような問題を解決するため,①2010年4月から相模原市の精神保健福祉センター内で,「セカンドオピニオン外来」と称する患者相談窓口を開設,②いわゆる門前薬局以外の調剤薬局にかかりつけ薬剤師をもつよう患者に勧める,③地域で製薬企業が関係しない研究会や勉強会を増やす,などを実施してきた.6.さらに今後うつ病診療における地域連携を進めるために,①「うつ状態地域連携クリティカルパス」を作り,地域の医師が共有する,②「県北部うつ病地域ネットワーク」を作り,精神科医療を透明化,可視化して不適切治療を減らす,などの試みを進めている.7.このような試みの中で,精神科医療の質を向上させるために,筆者が当面,最も重要と考えるのは「精神科医療過程の可視化,透明化」である.

索引用語:うつ病, 地域連携, 薬物療法, セカンドオピニオン外来, 地域連携クリティカルパス>
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