Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第7号

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特集 これからの精神科医療を考える―「地域でその人らしく暮らす」を実現するための政策・医療・財源を考察する―
その人らしい地域の暮らしを支える民間病院の取り組み
長尾 喜一郎
医療法人長尾会ねや川サナトリウム
精神神経学雑誌 117: 531-537, 2015

 「入院医療中心から地域医療中心へ」という政策の基本理念を実現するため,政府においては様々な施策がなされてきている.そこでは精神科長期精神障害者の問題,精神科病床削減が様々な見地から議論されている.精神科医療が地域に出ていく必要性は当然としても,そこにはいくつかの大きな障壁が存在する事実もある.昭和29年の実態調査で精神障害者の推定数は130万人,うち要入院は35万人であるとされ,国の補助もあり,精神科病床は最大35万床となり,昭和62年には地域医療計画において精神科病床は規制されるに至っている.結果,社会的偏見や社会復帰施設の不足などの要因も加わり,精神科への入院は長期化し,社会的な入院ともなった.しかしながら,我々民間精神科病院は昔から様々な精神科医療サービスを行い,地域での暮らしができるように取り組んできた事実もある.平成12年度精神障害者社会的入院解消事業は大阪から始まり,厚生労働省は平成15年にモデル事業として精神障害者退院促進事業を開始し,平成18年度には都道府県地域生活支援事業に位置付け全国展開がなされ,平成20年度からは精神障害者地域移行支援特別対策事業を始めている.「今後の精神医療福祉のあり方検討会」の報告書が平成21年9月にまとめられ,そこでは目標値についても示され「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念を推進するための各種施策が行われてきた.その入院医療の多くを担う民間精神科病院が所属する公益法人日本精神科病院協会は,平成24年に「我々の描く精神医療の将来ビジョン」の中で,「入院中心の医療から,地域医療・地域ケアへ」と基本方針を自ら掲げている.

索引用語:地域移行, 入院長期精神障害者, 地域医療, 精神科病床, 退院促進>
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