単科精神科病院で摂食障害患者を治療することには困難を伴う.その理由の第1は精神科医の数の少なさである.精神科医は単純に計算しても1人でおよそ30人の入院患者を診なければならない.また,一般科と違って基準に定めるメディカルスタッフの数も圧倒的に少ない.第2に国の診療報酬体系の問題がある.精神科医療全体が入院治療から外来治療に重点がシフトしてきており,摂食障害患者を長期に入院させて治療することが経済的に困難になってきている.そして第3に単科精神科病院の身体疾患の治療体制の脆弱さの問題である.これらを踏まえて,当院で経験した2症例を提示し,精神科病院での摂食障害治療の問題点と限界,医療機関や司法などとの連携のあり方などについて考察した.摂食障害患者が適切な治療を受けるためには様々な連携が必要であるが,いまだ不十分であるのが実態である.さらなる努力が求められている.
単科精神科病院における摂食障害の治療に対する問題点と限界
医療法人社団ハートフル川崎病院精神科
精神神経学雑誌
117:
341-347, 2015
<索引用語:摂食障害, 診療報酬, 地域連携, 万引き, 司法精神医学>