Advertisement第118回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第5号

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特集 神経性無食欲症治療の地域連携―各診療科の限界と精神科医の課題―
小児科における神経性無食欲症の包括的診療体制
渡辺 久子
LIFE DEVELOPMENT CENTER渡辺醫院
精神神経学雑誌 117: 333-340, 2015

 わが国で高度経済成長に伴い,小児の神経性無食欲症(AN)が増加し小児科診療のcommon diseaseとなっている.専門家の少ない日本では,必要に迫られ小児科医がANを診療している.発育期に栄養障害を放置すると,死の危険を伴う難治性障害になる.その結果,二次障害や長期の後遺症が生じ,脳萎縮,骨粗しょう症,不妊,育児困難や精神障害に苦しむ.ANは予防が大切で,治しやすい病初期に早期発見し,有効な集中治療により進行と慢性化を食い止め,健康な心身の発育軌道に戻す.慶應義塾大学医学部小児科学教室(以後,慶大小児科)は,1993年に児童精神科医を常勤に採用し,その指導のもと,AN治療を小児科の必須研修とし,現在に至るまで小児のAN包括診療体制を発展させている.AN一次ケアでは,平易な身体指標として体重と脈をあわせたANスクリーニング法を開発した.体重の成長曲線が「不健康やせ」を示し,かつ徐脈を認めるとき,感度83%,特異度93%でANが検出される.AN二次ケアでは,慶大小児科精神保健班がバックアップし,関連病院40の小児科でAN治療が実践された.AN三次ケアでは,重症AN患者集中治療体制(Anorexia Nervosa Intensive Care Unit:ANICU)を慶大小児病棟内に設置した.ANICUの要点は,患児が異化作用の危険を自覚し,主体的に治療に参加し,信頼できる治療者との関係を導くことである.ANICUは統一性,構造化と継続性をもつ.安静臥床,栄養摂取,段階的ADL上昇を系統的に進め,着実に異化作用から同化作用に導く.100余名の重症患児は死亡例なく救命された.研修医はANICUに参加し,毎日3度の食事介助を含む全人的ケアを実地に学んだ.過去20年間に300余名が研修を受け,出張先の病院で自らAN患者を治療している.専門家のバックアップのもと,小児科チームが家族や学校と連携し,地域で継続的治療を実践するコラボラティブケアが,これからは有効である.AN包括的診療体制の全国への普及と発展により,ANで苦しむ子どもが減ることを期待する.

索引用語:小児期神経性無食欲症, 成長曲線と徐脈による早期発見, ANICU, 再愛着療法, コラボラティブケア>
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