Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第4号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 どこから薬物療法を実施すべきか
抑うつ障害に対する抗うつ薬適応の閾値
黒木 俊秀1), 田中 徹平2)
1)九州大学大学院人間環境学研究院実践臨床心理学専攻
2)防衛医科大学校精神科学講座
精神神経学雑誌 117: 269-276, 2015

 近年,うつ病医療の広がりに伴い,その薬物療法の適応をめぐって多くの議論がある.ここでは,成人のうつ病に対する抗うつ薬の問題について,その歴史的経緯と国内外より公表されている治療ガイドライン上の適応基準について概説した.かつて,うつ病に対する薬物療法適応の閾値判断は,病態の「質」の鑑別が要点であったが,今日ではもっぱらうつ病の重症度という「量」の評価が閾値判断の根拠となっている.現在,発表されているガイドラインは,軽症うつ病に対して薬物療法を積極的には推奨していない.日本うつ病学会のガイドラインも同様であり,軽症うつ病に対する薬物療法の有用性を否定はしないものの,安易な薬物療法は避けるという態度を優先することを明記している.実際の臨床においては,個々の症例の病態の把握が欠かせず,症例特有の問題(自殺のリスクや併存症)の評価,また薬物療法の標的症状の設定や薬物の種類と用量の選択など,多くの課題に直面する.抗うつ薬適応の閾値は患者と医師の様々な条件の組み合わせによって異なると考えるべきで,薬物療法以外の治療選択肢も提供できることが求められる.

索引用語:軽症うつ病, 抗うつ薬, ガイドライン, 閾値, プラセボ効果>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology