Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第2号

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特集 rTMS の国内導入の展望と課題
反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の国内導入に向けて
中村 元昭
神奈川県立精神医療センター
横浜市立大学大学院医学研究科精神医学部門
昭和大学医学部精神医学教室
国際電気通信基礎技術研究所脳情報通信総合研究所
精神神経学雑誌 117: 94-102, 2015

 反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は低侵襲性の脳刺激法として,神経疾患のみならず,うつ病をはじめとする精神疾患への臨床応用が期待されている.2008年の秋に米国の食品医薬品局(FDA)は薬物治療抵抗性のうつ病に対してrTMSの使用を承認した.そして,2013年初頭にはdeep TMSの装置がうつ病治療装置として新たにFDAの承認を受けた.わが国において,rTMSの対象となるうつ病患者数は20万人を超えると推定される.現在,うつ病rTMSの国内導入を目指して,本学会,厚生労働省,医薬品医療機器総合機構(PMDA)を中心として話し合いがなされており,企業による努力も始まっている.こうした流れの中で,2013年には日本精神神経学会においてECT・rTMS等検討委員会が新たに設置され,rTMSの臨床応用のあり方が検討されている.具体的には,早期導入制度(医療ニーズの高い医療機器などの早期導入に関する検討会)に基づくうつ病rTMSの薬事申請や先進医療B申請への検討が進んでいる.また,厚生労働省からの要請を受けて,うつ病に対するrTMSのガイドライン作成の議論が開始されている.rTMSの適性使用にはどのような基準が必要となるのか,rTMSをうつ病治療アルゴリズムのどこに配置すべきなのか,精神科医療での脳刺激導入における神経倫理的枠組みなど重要課題が山積している.さらに臨床試験の経験からみえてきた実践的課題もある.4週間以上にわたり毎日3,000パルスのrTMSを実施する上での医師の業務負担をいかに軽減し,効率的かつ安全な運用を実現できるか,など診療科を越えて議論すべき事項もある.本稿では,うつ病rTMSの国内導入に向けた取り組みの方向性と経緯を報告し,rTMS国内導入のあり方に関する議論を深めるきっかけになればと考えている.

索引用語:反復性経頭蓋磁気刺激法, うつ病, ニューロモデュレーション, 厚生労働省, 医薬品医療機器総合機構>
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