Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第8号

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臨床報告
長期にわたる高気圧酸素療法(HBO)により重度の認知機能障害からの回復が可能であった間歇型一酸化炭素(CO)中毒症の3例に関する臨床的検討
綿貫 俊夫1), 松原 敏郎1), 樋口 尚子1), 樋口 文宏1), 井上 宏治1), 大土 広将2), 鶴田 良介3), 渡邉 義文1)
1)山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野
2)国立病院機構関門医療センター精神科
3)山口大学医学部附属病院先進救急医療センター
精神神経学雑誌 116: 659-669, 2014
受理日:2014年2月1日

 間歇型一酸化炭素(CO)中毒症に対して高気圧酸素療法(HBO)が有効であるとする報告は多く存在するものの,その治療効果を何を指標にしてどの時点で評価するかについては,いまだ定説がない.今回われわれは,長期にわたるHBOによって重度の認知機能障害から回復した間歇型CO中毒症の3例を経験した.3例はいずれも50歳前後の男性で,精神科通院歴がなく,COのみに曝露された影響で高度の意識障害を呈し,来院後24時間以内にHBOを施行されていなかったという共通点をもっていた.うち2例は間歇型CO中毒症を発症後,HBOを行っても臨床症状は悪化の一途をたどり,一時は無動無言の状態にまで至った.しかし,HBOを継続することで認知機能障害は大幅に改善したため,HBOはADLがどれほど悪化していたとしても,行うべき価値のある治療法であると考えられた.この2症例はともにHBOを30回施行した頃から臨床症状に改善がみられたことから,HBOの効果判定はステロイドパルス療法を併用しない場合,HBO 30回を目安にできる可能性が示唆された.HBOの効果を判定するための指標に関しては,頭部MRIやSPECTは臨床症状の改善に画像所見が同期しないため適切ではなく,脳波や認知機能検査を指標にしながらHBOの終了時期を判断していくことが重要と考えられた.

索引用語:間歇型一酸化炭素中毒症, 高気圧酸素療法, 効果判定指標, 認知機能障害, 認知機能検査>
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