Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第10号

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資料
統合失調症患者の病名告知に関する多施設調査
賀古 勇輝, 大久保 亮, 清水 祐輔, 三井 信幸, 田中 輝明, 久住 一郎
北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座精神医学分野
精神神経学雑誌 116: 813-824, 2014
受理日:2014年5月20日

 2002年に「精神分裂病」から「統合失調症」へと呼称が変更されてから10年以上が経過した.呼称変更後に病名告知が促進されていることは,医師に対する意識調査で示唆されているが,患者自身に対する実態調査では告知率の増加は明らかにされておらず,近年は多施設による告知率の調査も実施されていない.本研究では,北海道内の5つの医療機関において統合失調症患者とその主治医を対象として病名告知状況に関する調査を行った.対象患者全869名に対して主治医に対する調査票と患者に対する質問票により調査を行った.主治医から調査票を回収できたのは858名,患者への質問票を回収でき有効回答として利用できたのは529名であった.病名告知状況を調査するとともに,病名告知群と未告知群の背景を比較した.主治医調査票による病名告知状況の結果は,「統合失調症」と告知している患者が63.1%,「精神分裂病」と告知している患者が2.0%であり,合わせて65.0%であった.告知されているかどうか不明と主治医が回答した患者は18.4%であり,これを除外すると,「統合失調症」もしくは「精神分裂病」と告知している患者は79.6%に上った.患者質問票による病名の認識状況の結果は,「統合失調症」と回答した患者が55.2%,「精神分裂病」3.2%,その他の病名を答えた患者9.5%,病名を知らないと答えた患者17.4%,病名は知っていると回答したものの具体的には記載しなかった患者が14.7%であった.未記載の患者を除外すると,「統合失調症」もしくは「精神分裂病」と認識している患者は68.5%であった.病名告知群と未告知群との比較では,告知群は治療開始からの期間がより短く,調査時年齢もより低かった.治療開始時期が呼称変更された2002年より前の症例は未告知群で有意に多かった.この結果から,「統合失調症」への呼称変更や時代背景の変化により,病名告知がより積極的に行われるようになってきたことが示唆された.

索引用語:統合失調症, 病名告知, 呼称変更>
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