精神神経学雑誌

掲載論文ハイライト

精神医学のフロンティア | 375-383頁
平石 博敏,菊知 充,浅田 稔,三邉 義雄
3歳から7歳の自閉スペクトラム症児群(ASD)と定型発達児群(TD)の自発脳磁を小児用MEGで計測し,独立した信号源由来データの帯域毎の強度から側化指数を算出し,両群の側化指数を比較し,さらに月齢との相関を調べた.その結果,シータ1帯域で脳機能側化に違いが,また,シータ帯域,アルファ2帯域,ガンマ1領域で発達に違いが見られた.
厚労省が策定した「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」は医学的根拠が乏しいのに抗認知症薬をBPSDに使用するよう推奨している.その割に適応が限られていることや副作用に触れていないのでかかりつけ医がガイドラインを順守することでかえってBPSDが悪化しかねない.本稿では厚労省のガイドラインの問題点を医学的根拠に基づき具体的に挙げた.
特集 | 391-423頁
山室 和彦,棟居 俊夫,三邉 義雄,堀内 史枝,岡 靖哲,河邉 憲太郎,上野 修一,岩坂 英巳
本特集では,「発達障害治療のトピックス」というテーマのもと,「ADHD症状を伴う自閉スペクトラム症に対する薬物療法」,「自閉スペクトラム症におけるオキシトシン」,「睡眠障害と発達障害―どのように診立てていくべきか―」,「発達障害の心理社会的治療―ペアレントトレーニングとSSTを中心に―」について論じる.
特集 | 424-450頁
上田 諭,大石 智,宮岡 等,橋本 衛,工藤 喬
本特集では,「アルツハイマー病におけるSymptomatic Drugsの使い方と使い分け」というテーマのもと,「認知機能より生活への注目を―「張り合い」と精神療法の重要性―」,「Alzheimer病におけるSymptomatic Drugの有効性と副作用からみた評価」,「BPSDに対する抗認知症薬の使い方」,「認知症に対するSymptomatic Drugの使用について」について論じる.
現代は多くの社会問題の背景に「脳とこころの問題」があり,患者本人やその家族の生命や健康な生活に深刻な影響を及ぼしている.今後の精神医学の発展には,精神疾患を脳の病気として正しく理解し,発症の予防・早期介入,そして治療・回復の可能性を考える必要がある.本稿では,統合失調症をモデルとして精神医学上の問題を再考し,今後のあり方を問う.

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