Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文全文

第122巻第12号

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特集 精神科医療における身体拘束の現状と課題
山梨県立北病院における身体拘束
三澤 史斉
山梨県立北病院
精神神経学雑誌 122: 955-961, 2020

 精神科救急急性期治療の現場で,身体拘束は時として必要不可欠なものであるが,わが国における身体拘束は過剰といわれている.山梨県立北病院では,救急急性期での身体拘束は年間2,3例ほどである.それは,特に最少化への取り組みを行ったためではなく,歴史的に身体拘束が少なかったためである.そのメリットとして,患者の負担軽減と医療の質の向上が挙げられる.一方,デメリットとしては,人・時間をかけることの弊害,身体管理への不十分な対応,そして身体拘束をしていれば防げた事故の発生などがある.わが国で身体拘束が過剰となる理由はさまざまであるが,日本人の心配性の気質が影響して,患者の安全を守ることを理由に過剰に行われている可能性がある.しかし,救急急性期で目にする患者の多くは自傷他害のリスクを少なからず有しており,そのすべてを身体拘束で対応すると当然過剰になるため,最終手段であることの認識は必要である.身体拘束を含めた強制的な治療を適切に行うためには,患者の価値観に基づいてそれが最善の利益になるかどうか検討していかなければならない.同意判断能力が損なわれている患者の価値観を推測することは困難であるが,われわれはできるだけ適正な手続きのもとで行っていく必要がある.山梨県立北病院では,強制的な治療を行う場合,強制治療審査システムにおいて,患者の同意判断能力を評価し,最善の利益について多職種で検討している.今後,各医療機関でできるだけ適正な手続きが構築されていき,それによってわが国全体で,患者の人権を守りながら適切に強制的な治療が行える制度が整備されることを期待している.

索引用語:身体拘束, 強制治療, 最善の利益>

はじめに
 病院から地域へという流れのなかで,精神科入院治療の主な役割は,これまでの隔離収容を目的とした長期入院から,救急急性期治療へと移り変わっている.したがって,より適切な救急急性期治療を行っていくことが求められているが,精神医療における救急急性期治療は,エビデンスの確立が最も難しい領域の1つである.なぜなら,エビデンス確立のために必要な無作為化割り付け試験などの質の高い研究を実施するためには,研究参加へのインフォームド・コンセント(informed consent:IC)が必要となる.しかし,救急急性期の現場で目にする患者は,治療に対するICさえ困難であることが少なくないため,研究参加のICはより困難であろう.その傾向は,身体拘束を必要とするような重い症状を有する場合は,より顕著になると考えられる.
 このように,明確なエビデンスの構築が困難であるため,重い症状をもつ救急急性期の患者に対する治療は均一化されておらず,個々の病院の伝統や理念のようなものに影響され,ばらつきの多いことが指摘されている10)
 今後,わが国の精神科救急急性期治療全体の質を高めていくためには,このようなばらつきをできる限り少なくし,標準とされる治療の普及が必要である.特に,身体拘束は,精神科治療のなかで最も患者の苦痛が大きいものであり,わが国における過剰な身体拘束の問題について新聞などで報道もされている昨今,その対応は急務である.
 これまでの伝統から脱却して,身体拘束を最少化していくことは決して簡単ではないが,その足がかりとして,それぞれの医療機関の現状を報告し合い,それらを共有していくことがまずは重要であると思われる.そのため,今回,山梨県立北病院における身体拘束の状況,特に救急急性期における状況について報告する.後述するように,当院は身体拘束が少ない病院であるが,われわれの取り組みが最良であるとは決して思っていない.本稿をもとにさまざまな議論が行われ,わが国における救急急性期治療の発展へ少しでもつながっていくことに期待している.

I.わが国における身体拘束の現状
 身体拘束は,精神科治療を行ううえで必要な手段であることは間違いない.しかし,わが国における身体拘束は,その施行期間の長さおよび頻度の高さが大きな問題である.海外の状況と比較すると,わが国では身体拘束が長く,そして多く行われているといわれている7).例えば,身体拘束の平均施行期間について,わが国の救急病棟では7.2日,救急・急性期病棟で4日である一方,欧米ではほぼ半日以内で単位は時間である.
 さらに,身体拘束の施行患者数は10年前と比べて増加していることが示されており6),これには,認知症患者の転倒予防のための拘束が影響していることなども考えられるが,行動制限最少化が謳われている現在において,早急に対応しなければいけない問題であろう.
 しかし,身体拘束の実施については,各医療機関によってかなりのばらつきがあるといわれている10).全国30のスーパー救急病棟を対象にした研究では,調査期間中に身体拘束を実施しなかった病棟が複数ある一方,8割を超える割合で身体拘束を実施した病棟も認められ,20%を超える病棟が全体の3割程度あった.これには措置入院件数など種々の要因が影響しているであろうが,このようなばらつきは,わが国の精神科救急急性期治療における身体拘束のあり方が標準化されていないことの表れであり,今後,均てん化されるように努めていかなければならない.

II.山梨県立北病院における身体拘束の現状
1.山梨県立北病院の紹介
 人口80万人ほどの山梨県にある当院は,甲府市の中心から車で40分ほどかかる田舎型の精神科単科病院で,基幹病院としての役割を担っている.192床あり,1A(スーパー救急/医療観察法),1B(一般/多飲水),1C(一般/思春期/アルコール)そして2C(スーパー救急)という全4つの閉鎖病棟からなり,2つのスーパー救急病棟を有する.年間入院・退院患者数はいずれも700例強で,平均在院日数は80日を切る.

2.山梨県立北病院における身体拘束と救急急性期治療
 当院では,スーパー救急に入院した患者のうち,ベッド上で身体拘束を受けた症例は年間2,3例ほどであり,全国の状況と比べてかなり少ない.
 しかし,なぜこのように身体拘束が少ないのかという理由は,はっきりしていない.特に身体拘束を少なくする取り組みをした結果ではなく,歴史的に身体拘束が行われていなかったためである.40年前から当院で勤務している医師によると,その当時から身体拘束が行われておらず,拘束帯がなかったほどであり,治療を考えるなかで身体拘束の選択肢がほとんどなかったようある.そのため,30年ほど前に病院を建て替えた際も,身体拘束について考慮されずに建て替えが行われたため,現在でも身体拘束を行いづらい構造になっている.例えば,保護室が病院全体で11室,2つのスーパー救急病棟には計5室あるが,いずれも通常のベッドが備え付けられておらず,また,扉もベッドが通るほど大きくない.そのため,身体拘束をするためには,ベッドを一旦分解し,それらを保護室内に運び,そこでベッドを組み立てなければならない.これには時間,労力がかかるため,よほどの状況でない限り,身体拘束が治療の選択肢として挙がらないという現状がある.
 そのため,わが国における統合失調症救急急性期治療で特徴的な方法である,身体拘束下でのハロペリドール点滴静注はほぼ行われない.そもそも,抗精神病薬の注射製剤の使用頻度自体が少ない.その一方で,比較対照する資料がないため著者の私見であるが,電気けいれん療法は比較的頻度が高く,早い段階で施行されているかもしれない.当院では週3回,1回5例の修正型電気けいれん療法(modified electroconvulsive therapy:mECT)を施行することができ,年間約600回施行している.
 また,身体拘束が必要とされるような患者に対するかかわり方については,端的にいうと看護師を中心としたスタッフが人・時間をかけて対応している.身体拘束が必要とされる状況は,自傷他害のリスク,拒薬,そして身体管理の必要性などが考えられるが,自傷他害のリスクが高い場合には,頻繁に,必要に応じて複数のスタッフでかかわり,拒薬に対しては人・時間をかけて内服するように説得し,身体管理のため点滴などが必要な場合には,看護師が点滴終了まで付き添うなどの対応をしている.

3.身体拘束が少ないメリット・デメリット
 身体拘束を簡単に選択しないメリットとして,患者の負担軽減と医療の質の向上が挙げられる.
 身体拘束がもたらす患者への心理的負担は,かなり大きいものであろう.当院加療中のある統合失調症患者は,他院での入院歴がありそのときに身体拘束を受けたため,恐怖感でその病院に通院することができず再発した.その病院への拒否が強かったため再発後にそこへ行くことができず,当院に受診し入院となったが,「この病院は入院しても縛られないから安心できる」と言った.このように,身体拘束による心理的負担が治療継続性に影響を与える可能性を考慮することも必要である.実際,入院して1週間の治療への印象が,1年後のアウトカムに影響を与えるということも報告されている9)
 また,当院では身体拘束がはじめから選択肢として挙がることがないため,看護師たちはどのように安全性を確保し治療していくのかについて,患者ごとに日々知恵を出し合い,時間をかけて議論している.著者は,そのような議論を重ねていくことが,われわれの医療の質を高め,個別的で適切な医療を提供することにつながっていくと思っている.身体拘束は,より確実に自傷他害を防ぎ,確実な薬物投与も可能で,十分な身体管理も行うことができる.これらの安全性を高める身体拘束のメリットは,医療スタッフに大きな安心感を与えるが,その安心感は,身体拘束を選択することへの閾値を下げ,それ以外の選択肢を考えにくくしてしまう危険性もはらんでいる.身体拘束と多少ずれるかもしれないが,秘密投薬についてのレビュー11)のなかで,それをしてもよいと一旦決めると,乱用のリスクが高くなり,結果的に医療の質の低下へつながると記されており,身体拘束にも同じようなことがいえるかもしれない.
 一方,デメリットとして,人・時間をかけることの弊害,身体管理への不十分な対応,そして身体拘束をしていれば防げた事故の発生などが挙げられる.
 身体拘束をしないために,患者一人に対してかなりの人・時間をかけなければならないこともあり,他の業務へ支障をきたすことがある.このような対応は,山梨県のような人口の少ない地域だから可能なのであり,都市部の病院では困難なことかもしれない.
 また,例えば患者が不穏な状態であるが輸液が必要な場合,当院では,フルニトラゼパムの静注による鎮静後,看護師が付き添って輸液を施行することがしばしばある.しかし,覚醒が早かったり,覚醒後の強い不穏が予想されるため,補液量を必要量より少なくしなければいけないこともある.
 さらに,保護室内において,スタッフへの暴力,壁に頭を打ちつける,衣類での縊首企図などの自傷,そして転倒など,身体拘束をしていれば防ぐことができた事故も毎年数件は発生する.
 このように,もしかしたら身体拘束をしたほうが適切であったと考えられる場合もあることは事実である.

III.身体拘束が過剰に行われる理由
 前述したように,欧米と比較してわが国の身体拘束は過剰といわざるをえない状況であるが,この理由として,行動制限に対する法律やスタッフ比率の違いなどさまざまなことが挙げられる.そのなかで,今回は日本人の気質が過剰な身体拘束に影響している可能性について言及していきたい.
 世界各国を対象としたアンケート調査によると,不安指数について日本は13ヵ国中第1位で4),不確実性回避の傾向について65ヵ国中第10位3)と報告されている.つまり,日本人は不安を感じやすく,不確実な状況を回避する傾向が高いという特性をもっている可能性がある.さらに,野田らによる精神科病棟で働いている看護師に対する調査によると,病棟における安全性への実感が欧州の先行研究と比べて著しく低いと報告している8)
 このように,不安を感じやすく,不確実性回避の傾向が高い特性をもつ心配性な日本の医療スタッフが,安全性が実感できない環境に,自傷他害のリスクがあるような患者を入院させる場合,確実に安全を確保したいと考えたとき,身体拘束を選択することは極めて自然な思考過程と考える.種々のリスクを想定し,それらに適切に対応していくことは医療者として正しい姿である.少なくとも著者は,怠慢や人権軽視のためにわが国の身体拘束が過剰になっていると決して思っていない.むしろ,患者の安全を守るために,不安や不確実性回避について特性をもつわれわれ日本人が,最善の策と考えて身体拘束を行うことが往々にしてあり,その結果,欧米と比し過剰になることも理由の1つだと考えている.
 しかし,われわれが救急急性期医療で目にする患者のうち,自傷他害のリスクがない患者のほうがむしろ少ないため,いくら安全を守るためだといっても安易に身体拘束を選択すると,やはり過剰なものになってしまう.身体拘束はあくまでも最終手段であるという基本的な認識を忘れず,身体拘束をする,しないのリスク・ベネフィットを患者個別に考えていくことは不可欠である.また,身体拘束をしない場合や早期に外す場合のリスクを心配性な日本人である医師や担当看護師個人で背負うことは酷である.それでは,最少化をもたらすことができないと思われるため,個人で決断をするのではなくチームで検討したうえで決めて,チーム全体で責任を担うような体制が必要であろう.

IV.身体拘束を含めた強制的な治療を適切に行うために
 われわれ医療者は,患者の自律性を尊重することは当然であるが,同意判断能力が損なわれている患者に対しても必要な医療を提供する義務がある.そのため,われわれは身体拘束に限らず強制的な治療をしばしば行うが,それは,その治療が患者にとって最善の利益となる場合に限られる.
 最善の利益とは,医学的事実と患者の価値観から検討していくものとされている1).したがって,強制的な治療が行われる場合,それは医学的事実として適切であることが求められるため,例えば,薬物治療の場合には,ある程度のエビデンスに基づいて行われなければならないし,身体拘束の場合も,医学的に正しい手順・管理のもと,行われる必要がある.
 もう一方の患者の価値観について,同意判断能力が損なわれている患者の価値観をどのように考えていくのかということは,精神科臨床のなかで最も大切で,最も難しいことの1つだと著者は考えている.
 患者の健康なときの価値観を最も知りうる存在として,家族などの代諾者の判断に委ねることが通常行われるが,適切な代諾者がいない場合や代諾者の判断が患者の価値観を反映しているとは思えないような場合に臨床では遭遇することがある.また,別の方法として事前指示があるが,現在のところ,それを行っている患者がほとんどおらず,また,今後それが普及したとしても,価値観が時々刻々と変化することは自然なことで,その状況にならなければ判断できないことも多々あるため,事前指示がそのときの患者の価値観を反映させるものとして万全ではない.
 つまり,同意判断能力が損なわれている患者の価値観について,絶対的な正解を導くことは不可能である.それでもわれわれが取り組んでいかなければいけないことは,患者の価値観について,蓋然性,つまり,「もっともらしさ」を高めていくことである2).例えば,自傷他害のリスクがある場合に隔離・拘束すると決めているというような画一的な対応は,まったく蓋然性が高くないため患者個別に検討するべきである.また,担当の医師や看護師だけで考えるより,患者本人や代諾者を含む多職種のチームで検討したほうが蓋然性は高い.さらに,倫理的問題を扱うようなカンファレンスで検討すると,より蓋然性は高くなるかもしれない.
 このように,身体拘束を含めた強制的な治療を行う場合,よりもっともらしい方法でそれが最善の利益となるのか否かを検討していくことが必要である.病院の事情やその時の状況で,できることに限りはあるかもしれないが,可能な限り適正な手続きのもとで最善の利益について検討していくことが,適切な治療につながっていくであろう.

V.山梨県立北病院における強制的な治療の審査
 当院では身体拘束下での治療を行うことはほぼないが,治療への強い拒否が続くため強制的な薬物投与やmECTを行うことがある.しかし,これまでは主治医個人の判断で行うなど,適正な手続きを経ずに強制的な治療を行っていた.その反省から,2012年より医療観察法指定入院病棟を併設するスーパー救急病棟で試行開始され,2016年より病院全体で行うようになった強制治療審査システムを紹介したい12)
 本システムの審査対象となるのは,入院72時間以降でも治療拒否が認められ,主治医が強制的な治療(薬物投与・mECT)を行う必要があると判断した患者である.まず,主治医が強制治療申請書を作成し申請をする.申請書には,強制治療内容,標的症状,治療拒否の理由,身体的状況,代替治療の有無とその受け入れ,治療を受けなかった場合に生活の質に及ぼす影響,治療の説明状況,代諾者同意状況および迅速審査の必要性について記載される.申請書を受け付けた審査対象患者の当日受け持ち看護師は,心理士に治療同意判断能力評価を依頼し,本審査の開催日程を調整する.
 対象患者の同意判断能力評価は,心理士により,SICIATRI(Structured Interview for Competency and Incompetency Assessment Testing and Ranking Inventory)5)を用いて行われる.この評価によって同意判断能力があると評価された場合は,却下となり強制治療は行われない.
 同意判断能力に問題があると評価された場合には,その結果が強制治療申請書に記載され,強制治療内容の適切性やこれを行うべきかどうかに関する審査が行われる.病棟医長,病棟師長および治療同意判断能力評価を行った心理士の3名が,強制治療申請書,診療録および患者面接をもとに,申請された強制治療の妥当性について審査を行う.
 審査の結果,強制治療の申請を却下した場合には,その理由を主治医に告げ,今後の治療のあり方について協議・助言する.承認した場合,審査担当者が対象患者へ文書を用いて,主治医から申請された強制治療を承認したこと,その治療の具体的方法,患者本人の同意によらずその治療が行われる旨を告知・説明する.
 また,審査の内容の適切性や審査を行わずに強制治療がなされていないかを確認するため,毎月1回強制治療審査システム委員会が開催されている.
 以上のような手続きのもと,当院では強制的な治療が行われているが,いくつかの課題も有している.まず,審査は病院内のスタッフだけで行われており,外部委員は関与していない.本来なら外部委員の参加が求められるのだろうが,時間的,人的制約により外部委員が参加する体制ができていない.また,審査の対象となる治療が,強制的な投薬とmECTのみであり,隔離・拘束や身体合併症に対する治療などを対象としていない.さらに,本システムは,あくまで代諾者の同意のもとに審査が行われるが,家族などの代諾者がいない場合の対応が決められていない.
 上述した以外にも種々の課題があるかもしれないが,当院の実状から考えて現段階でできうる範囲の対応で審査を行っている.まだまだ不十分なものであるが,何も手続きがなかった以前と比べると,随分,強制的な治療の適切性について議論が重ねられるようになっていると自負している.そして,今後,より適切な審査が行えるように発展させていきたいと考えている.

おわりに
 身体拘束を含めた強制的な治療は,精神科の臨床現場では時として必要不可欠なものである.しかし,そのなかでも患者の苦痛が最も大きい身体拘束が,欧米と比べて過剰に行われている事実を認識する必要はあり,いくら患者の安全のためといっても早急に改善させていかなければならない課題である.
 まずは,各医療機関でこの問題について検討し,できるだけ適正な手続きのもとで行うような仕組みを作っていくことが望ましい.しかし本来であれば,身体拘束だけでなく強制的な治療全体について,患者の人権を守りながらどのように適切に行っていくのかということは,国全体の制度として取り扱われるべき問題である.
 今後,こういった議論が深まり,適正な手続きのもと強制的な治療を行えるような仕組みが,国全体で整備されていくことに期待している.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

1) 赤林 朗編: 入門・医療倫理I 勁草書房, 東京, 2005

2) 福井次矢, 浅井 篤ほか編: 臨床倫理学入門 医学書院, 東京, 2003

3) Hofstede, G., Hofstede, G. J., Minkov, M.: Cultures and Organizations: Software of the Mind. McGraw-Hill, New York, 2010

4) JWT Anxiety Index Quarterly. Volume 4 Winter 2009 (https://www.slideshare.net/gagupta/j-w-t-anxiety-index-quarterly-winter-2009) (参照2019-09-25)

5) 北村總子, 北村俊則: 精神科医療における患者の自己決定権と治療同意判断能力. 学芸社, 東京, 2000

6) 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部: 精神保健福祉資料. 2007 (https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/630/assets/pdf/h19_630.pdf) (参照2020-10-01)

7) 野田寿恵, 杉山直也, 川畑俊貴ほか: 行動制限に関する一覧性台帳を用いた隔離・身体拘束施行量を示す質指標の開発. 精神医学, 51 (10); 989-997, 2009

8) 野田寿恵, 佐藤真希子, 杉山直也ほか: 患者および看護師が評価する精神科病棟の風土―エッセン精神科病棟風土評価スキーマ日本語版(EssenCES-JPN)を用いた検討. 精神医学, 56 (8); 715-722, 2014

9) Priebe, S., Katsakou, C., Amos, T., et al.: Patients' views and readmissions 1 year after involuntary hospitalisation. Br J Psychiatry, 194 (1); 49-54, 2009
Medline

10) 杉山直也, 野田寿恵, 川畑俊貴ほか: 精神科救急病棟における行動制限一覧性台帳の臨床活用. 精神医学, 52 (7); 661-669, 2010

11) Treloar, A., Philpot, M., Beats, B.: Concealing medication in patients' food. Lancet, 357 (9249); 62-64, 2001
Medline

12) 横森いづみ, 藤井康男, 三澤史斉: 山梨県立北病院における強制治療審査システム. 臨床精神薬理, 21 (9); 1199-1206, 2018

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