Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第5号

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教育講演
第111回日本精神神経学会学術総会
精神療法の学び方・活かし方―Japan Psychotherapy Weekの提案―
井上 和臣
医療法人内海慈仁会内海メンタルクリニック・認知療法研究所
精神神経学雑誌 118: 351-357, 2016

 日本精神神経学会精神科専門医研修ガイドラインでは,認知行動療法について紹介・理解・説明できるという研修目標にとどまっている.認知行動療法の卒後研修に関連して日本認知療法研究会・学会での認知療法研修会を回顧した.JPWは,わが国の精神科臨床に欠かすことのできない精神分析療法,森田療法,行動療法,認知療法・認知行動療法などについて討議し学ぶ機会として年来夢想してきたものである.精神療法にかかわる複数の学会が同時に,あるいは重複期間を含みながら相前後して,同一の会場で開催される,それがJPWである.発想は精神科鑑別治療学にある.認知療法は洞察的なものと指示的なものの境界にまたがり独特な位置にある.複数の学会が関与する週間の雛形は日本消化器関連学会週間(JDDW)にある.JPW 2015「和と洋の邂逅」は神戸旧居留地のホテルで1週間の間隔をあけ2夜にわたって開催された.JPW 2015は学術講演会であるが,参加者が食事を摂りながら講演を聞き論議するという形式を採用した.ゆったりした雰囲気の中で円卓を囲み五感のすべてを活動させて精神療法にまつわる話題を賞味するという趣向であった.第1夜では,開会を告げる乾杯に続いて世阿弥の『風姿花伝』をもとに趣旨を説明した.講演は,原田による「和と洋の望ましい邂逅の形とは?」と,中村による「精神療法が根をもつこと」であった.第2夜は,北山による「精神療法における言葉の力」から幕を開けた.講演後の乾杯に続いてプラトンの『饗宴』から引用を行った.認知療法に精神療法を統合する力をみる論がある.しかし,JPWは精神療法の統合とは一線を画す提案である.JPWにおいて認知療法は触媒の役割を果たし消えていくことになる(消えゆく認知療法).JPWが恒常的になれば,精神科医のアイデンティティをいっそう豊かにする機会が増えることになるだろう.

索引用語:精神療法, 精神科専門医, 研修, 消えゆく認知療法, Japan Psychotherapy Week>
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