精神科医として日々を送っていると,自分の仕事がどのようなものであるかを見失いがちになる.精神科医の役割を改めて振り返ると,それがさまざまな「特権」に恵まれていることに気づく.そこには,重要な疾患である精神疾患の医療に携わっているという特権,専門家という立場にあることに基づく特権,社会の制度のなかで与えられている特権,がある.さらに仕事のなかで,人間の生き方や人生の価値について気づくことができるのは,自分自身についての特権である.これらの特権を自覚し,医学と医療のために役立てることに意識的であることは,精神科医としての使命である.「人間にとって一番重要な医療」に携わっているという誇りを当事者や家族や多くの仲間と共有できることが,精神科医であることの特権である.
第110回日本精神神経学会学術総会
精神科医の「特権」に気づき役立てる
群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学
精神神経学雑誌
117:
353-361, 2015
<索引用語:精神科医, 精神疾患, 特権, 使命, 価値精神医学>