成人期に精神科をはじめて訪れる症例の中に,発達障害の診断例が急増している.本稿では,発達障害の類型概念について整理し,鑑別診断と対応の考え方について述べた.今後,すべての精神科医に以下のことが求められる.診断においては,発達障害と他の精神疾患との類型概念の違いを知り,臨床場面ですべての症例に対して「発達」というディメンジョナルな軸を導入し,多軸的に診断する習慣をもつ.対応においては,個々の症例における生活困難に発達障害がどの程度影響を及ぼしているのかを念頭に置き,発達障害の特徴に配慮した環境設定を行いながら併存する他の精神疾患の治療を行う.
第109回日本精神神経学会学術総会
成人の発達障害―類型概念,鑑別診断および対応―
信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部
精神神経学雑誌
116:
513-518, 2014
<索引用語:発達障害, 鑑別診断, 自閉症スペクトラム障害, ADHD, 成人期>