こころと脳は“重ね描き”(大森)の関係であり,治療においてのみ両者の連繋は意味を持つ.こころと脳の連繋には,こころの現象を脳につなげうる言葉で,脳の機能障害をこころにつなげうる言葉で表現することが肝要であり,そのような言葉を共有することがこれからの課題である.こころと脳を治療という視点から重ね描き,認知リハビリテーションにつなぎえた左前頭葉梗塞後に軽度の強迫傾向を示した1例を紹介した.またこころと脳の“重ね描き”ができない事態,またすり合わせではなくこころが脳を規定する事態がありうることも,前者では連合型視覚失認を,後者では統合失調症の幻聴を側頭葉との関係も含め,ともに言葉の問題との関係で考察した.
第109回日本精神神経学会学術総会
“こころ”と“脳”―重ね描き―
国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科
精神神経学雑誌
116:
316-322, 2014
<索引用語:こころと脳, 重ね描き, 大森荘蔵, 連合型視覚失認, 統合失調症の幻聴>