精神疾患の研究では,特定の水準での説明に還元しようとするのではなく,遺伝子・物質・細胞・神経回路・脳から心理・社会・文化にわたって,それぞれの階層で何が説明できるのか,どのように臨床に応用できるのか,を問う必要がある.このような「多元主義」をもって精神疾患の過程・意味を描き出し,それを病態の理解と治療に応用する上で,これまで論考されることの少なかった,器質としての「脳」と心因としての「文化」の共同構成に触れる.さらに,文化アフォーダンスという概念を導入して,メンタリティの病としての精神疾患の側面の理解を深める試みを紹介する.
会長講演
精神病理の器質因と心因―脳と文化の共同構成にふれて―
九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野
精神神経学雑誌
116:
238-244, 2014
<索引用語:文化心理学, 文化神経科学, アフォーダンス, 精神疾患, 多元主義>